岐阜県内では2025年、熊(ツキノワグマ)の目撃・出没情報が急増しており、10月下旬時点で705件と昨年度の年間件数を既に超えています。
世界遺産の白川郷で観光客が襲われる事故も発生し、県は「ツキノワグマ出没注意情報」を発令中です。
主な餌となるドングリが凶作であることから、冬眠前の熊が人里に出没しやすい状況が続いています。
この記事では、岐阜県内の熊の生息地域、最新の目撃・出没情報、そして安全対策まで詳しく解説します。
岐阜県における熊(クマ)の生息地について

県内全域に広がる生息域
岐阜県内にはツキノワグマが生息しており、推定個体数は2914~4693頭(中央値3708頭)とされています。
岐阜県では県内に生息するツキノワグマを、地形に沿って2つの地域個体群に分けて管理。
白山・奥美濃地域個体群(西側)では973~1629頭(中央値1263頭)、北アルプス地域個体群(東側)では1941~3064頭(中央値2445頭)と推定されています。
県内ではほぼ全域で生息が確認されており、山間部を中心に広範囲に分布。
とくに注目すべきは、出没報告が無い地域にも生息している可能性があるという点です。
本来は山の中でひっそりと暮らしている臆病な動物ですが、近年は山と人里との境界があいまいになり、人里近くでの出没が増加しています。
主な生息地域と特徴
飛騨地域
飛騨地域では目撃情報が最も多く、特に高山市、飛騨市、白川村で頻繁に報告されています。
過去5年間のデータでは、飛騨圏域での出没件数が県内全体の約7割を占めています。
高山市では2025年10月に栗拾い中の男性が襲われ大怪我を負う事故が発生し、白川村では10月5日に外国人観光客が襲われる被害がありました。
白川村では2025年のクマ目撃件数が111件と、2024年の約3倍に達しています。
東濃地域
東濃地域でも生息が確認されており、中津川市や恵那市周辺で多数の目撃情報があります。
2025年9月には中津川市坂下で帰宅途中の高校生が熊に襲われる被害が発生しました。
中津川市や恵那市では住宅街近くでの目撃も報告されています。
岐阜地域
岐阜地域では本巣市周辺で目撃情報があります。
金華山(岐阜市)では独立した山ではなく北側の山々と緑地帯で繋がっているため、熊が移動してくる可能性が指摘されています。
西濃地域
西濃地域では揖斐川町周辺で多数の目撃情報が寄せられています。
2025年10月27日には揖斐川町上野地内で小熊1頭の目撃情報がありました。
中濃地域
中濃地域では郡上市、関市、下呂市などで出没が報告されています。
郡上市では2025年10月に入り目撃情報が急増し、市街地でも確認されています。
下呂市では萩原地域や小坂地域で連日のように目撃されています。
岐阜県の熊の目撃情報・出没情報
2025年最新の目撃・出没状況
2025年は岐阜県内で熊の出没が大幅に増加しています。
10月20日現在で705件の目撃情報が寄せられ、既に昨年度の年間件数を超えました。
月別では、熊が冬眠に向けて活動を活発化させる9月と10月に特に多くの目撃情報が集中しています。
9月には123件(11年以降で3番目)、10月20日時点では151件(同2番目)に達しています。
人身被害も深刻で、2025年度は10月時点で4件発生しており、すでに昨年度の3件を超えています。
罠(わな)で捕獲した後の被害も含めると、県内各地で被害が相次いでいる状況です。
最新の目撃・出没事例
白川村での観光客襲撃事件
2025年10月5日午前8時30分頃、世界遺産の白川郷合掌造り集落でのこと。
スペイン人観光客の男性(40歳)が展望台行きシャトルバス乗り場付近で写真を撮っていたところ、茂みから体長約100センチの子熊に襲われ、右腕に切り傷を負いました。
この事件を受けて白川村では警戒が強化され、毎年恒例の紅葉ライトアップが中止となりました。
高山市での熊(クマ)被害
2025年10月12日午後4時半頃、上宝町で栗拾いをしていた76歳の男性が親子と見られる月の輪熊2頭に襲われました。
男性は頭を引っかかれ左腕を噛まれて骨折する大怪我を負っています。
現場は集落から500メートルほど離れた栗林でした。
中津川市の住宅街での被害
2025年9月2日午後7時15分頃、
坂下橋付近で帰宅途中だった高校1年の男子生徒が頭と背中を熊に引っかかれ怪我をしました。
現場はJR中央線近くの住宅街で、地元住民に不安が広がりました。
郡上市では市街地でも目撃情報あり
2025年10月4日未明には白鳥町の商店街付近で体長約1メートルの熊が目撃されました。
この地域には500メートル以内に小学校や保育園が存在するため、警戒が呼びかけられています。
岐阜県で熊(クマ)が出没する理由と背景
2025年はドングリが凶作
2025年は熊の主な餌となるドングリ類が不作となっています。
岐阜県が実施した豊凶予測調査の結果、ブナとミズナラはともに「凶作」、コナラは「並作」でした。
中でも、飛騨地域では3種類とも「大凶作」「凶作」となっており、県環境生活課は「クマは冬眠前に餌を求め、行動範囲が広がる。特に注意が必要」としています。
ドングリの豊凶がクマの出没に大きく影響することは過去のデータからも明らかで、大量出没年であった2019年度、2020年度、2023年度には、県内全域でツキノワグマの出没件数が増加しました。
餌が不足している年は、例年よりも冬眠時期が遅くなる傾向があり、少なくとも12月末までは注意が必要とされています。
人里に誘引する要因
熊が人里に出没する背景には、生ゴミや放置果樹などの誘引物の存在があります。
収穫しない放置果樹は早めに実を取り除くか木を伐採すること、生ゴミがクマの餌とならないようゴミ出しのルールを徹底することが重要です。
また、里山や住宅地周辺の藪や河川敷等の刈払いを行い、クマの移動経路となる環境を作らないことも対策として推奨されています。
生息域の拡大と分布の変化
近年、県内でのクマの分布範囲は拡大しているとみられています。
山と人里との境界があいまいになり、人里の近くに出没しやすい状況が生まれています。
クマは本来臆病な動物で人を避けますが、学習能力が非常に高く、イノシシやシカの肉の味を覚えてしまったクマは人を襲う可能性が高まるとの指摘もあります。
岐阜県の熊(クマ)目撃・出没情報の確認方法

岐阜県では「岐阜県クママップ」を提供しています。
県域統合型GISぎふの地図上でリアルタイムに目撃情報を確認可能です。
このマップでは最新の目撃情報があった場所、目撃された日時、過去の出没履歴などを視覚的に把握できます。
インターネット上で誰でも閲覧可能で、パソコン上で自由に地図を移動したり縮尺を変更することができます。
各市町村でも独自に情報発信を行っています。
下呂市はInstagramやX(旧Twitter)で土日祝日も最新情報を更新しており、関市、高山市、飛騨市、中津川市など各自治体のホームページでも出没情報を公開しています。
スマートフォンアプリ「BowBear」も活用できます。このアプリでは全国の熊出没情報を地図上で確認でき、自治体の公式情報とユーザーによる目撃投稿情報の両方が表示されます。
ユーザーが出没ポイント付近(200メートル以内)に近づいた場合、リアルタイムで警告音を鳴らす機能もあります。
熊に遭遇しないための対策
事前の情報確認と準備
山や山林に入る前には、必ず「岐阜県クママップ」で最新の出没状況を確認しましょう。
県や市町村が発出するクマの出没情報に注意し、特に最近の目撃情報がある場所は避けることが賢明です。
入山する際には鈴やラジオを利用して自分の存在を示すことが重要です。
一般的に西洋のベルは日本の鈴よりも音が遠くまで届くため効果的で、運動会で使うようなホイッスルタイプの笛も有効です。
ただし、餌付けされた熊には鈴の効果が薄いとの説もあるため、複数の対策を組み合わせることが望ましいです。
複数人での行動を心がけ、2人以上で山に入ることが推奨されています。
そして、早朝や夕暮れ時、夜間など薄暗い時間帯の外出は極力避けましょう。
山に生息するクマは昼行性ですが、人里近くに生息するクマは人間を避けて夜行性になると言われています。
登山やハイキング中の注意点
山に入る際は、やぶ等の見通しが悪い場所や沢沿い等の音が聞こえ難い場所では特に注意が必要です。
クマの気配や痕跡(足跡、糞、爪痕など)があった場合は立ち去ることが賢明です。
ゴミや食べ物を放置しないことも重要で、臭いでクマを引き寄せないよう徹底しましょう。
クマ撃退スプレーの携帯も検討すべきです。
メーカーの調査によると、スプレーを持っていた人のうち98%は怪我をしなかったという報告があります。
ただし、非常に高価で、噴霧タイプは風の影響を強く受けやすいため、使用時には注意が必要です。
カウンターアソールトなどの熊撃退スプレーは10%唐辛子エキスを主成分とし、320万SHU(スコビル熱単位)の激烈な刺激でクマを撃退します。
住宅地や生活圏での対策
住宅地やその周辺では、収穫しない放置果樹は早めに実を取り除き、または木を伐採するなどクマの餌となる果樹を残さないことが重要です。
生ゴミがクマの餌とならないよう、ゴミ出しのルールの徹底やゴミ集積場の対策を地域ぐるみで取り組むことが推奨されています。
里山や住宅地周辺の藪や河川敷等の刈払いを行い、クマの移動経路となる環境を作らないことも効果的です。
家や通学路周辺のやぶを刈り払い、見通しをよくすることで熊が近づきにくくなります。
薄明薄暮の時間帯は林縁に近づかないよう注意しましょう。
熊に遭遇してしまった時の対処法
基本的な行動原則
万が一クマに遭遇した場合、「落ち着くこと」が最も重要です。
急に大声をあげたり、急な動きをするとクマが驚いてどのような行動をするか分からないため、注意が必要です。
走って逃げることは絶対に避けるべきで、クマは時速40キロメートルのスピードで走ることができるため、人間は追いつかれてしまいます。
距離別の対処方法
■遠くにクマがいることに気づいた場合は、気づかれないように静かにその場から立ち去りましょう。
クマから目を離さないようにして、できるだけゆっくりと後ずさりしながらクマから離れます。
■近くにクマがいる場合は、クマの様子を見ながら、静かにゆっくりと背中を見せずに後退します。
クマを刺激しないよう、落ち着いた行動が大切です。人間だということを知らせるため、石や倒木などに上がり、大きく腕をふりながら穏やかに声をかけることも有効です。
■クマが接近を続ける場合、車内や屋内などに退避しましょう。
距離が50メートル以内でクマが明らかに人を意識しながら接近を続け、逃げ場がなく逃げ切れそうになければ、強気に対応します。
倒木や石の上に立ち、自分を大きく見せ、大きな声と音をたてて威嚇しましょう。クマ撃退スプレーを持っていれば、噴射の準備をします。
子熊への対応
子熊には絶対に近づかないことが最重要です。子熊に危害を加えられると、親熊(母熊)は敏感に反応し攻撃性が高まります。
子熊が1匹でいるように見えても、近くにはほぼ必ず親熊が存在していると考えましょう。
母グマと子グマの間に入ってしまうことが特に危険で、母グマが子グマを守るためにパニックに陥り突進してくる可能性があります。
襲われそうになった場合
クマが向かってきた場合、突進のほとんどは威嚇突進です。
クマと自身の直線上に障害物を挟むことを試み、クマスプレーを使用します。目や鼻を狙って噴射しましょう。
基本的にツキノワグマは人を食べるために襲ってくるのではなく、自分が逃げるために攻撃するため、抵抗せずに数分耐えれば逃げていくと言われています。
防御態勢をとり、首と腹を守る姿勢を取りましょう。
岐阜県の熊(クマ)対策の取り組み
緊急銃猟制度の導入
岐阜県では2025年9月から緊急銃猟制度の運用が始まりました。
これは自治体の判断で危険なクマを駆除できる制度で、美濃市では県内の自治体職員や警察官など90人ほどが参加した勉強会が開催されました。
白川村では10月28日に夜間の対応について訓練を行い、猟友会のメンバーや警察、村の職員あわせて25人が参加しました。
訓練では周囲が暗く猟銃でクマを狙うことが難しいことが判明し、今後照明の数を増やすなどの対応を検討しています。
ドローンや発信器の活用
岐阜県の江崎禎英知事は2025年10月27日の定例記者会見で、ドローンを飛ばして音を出すなど、クマが人里に近づかないよう積極的な対策に取り組む考えを示しました。
県は早急にドローンや発信器の活用を検討しており、対象動物にGPS首輪発信器を取り付け、設置した自動受信局により、対象動物の位置をパソコンやスマートフォンから24時間監視できるシステムも導入が検討されています。
飛騨市では岐阜県内初となる独自の「ツキノワグマ出没注意報」を2025年10月に発表しました。
クマのエサとなるブナの実等が少なく、餌を求めて人里に現れるケースが増えることが予想されることから、クマの活動が活発になる朝夕の外出を控えるよう呼びかけています。
地域ぐるみの対策
岐阜県では「地域ぐるみ」でのクマ対策を推進しています。
忌避剤の設置、熊スプレーの常備、スタッフによる巡回、花火による熊よけ、ごみの管理徹底などが実施されています。
郡上八幡自然園では、熊の嫌いな匂いのする薬を所々につるし、朝方と夕方に犬2匹を連れてスタッフが園内を巡回し、定期的に花火を使用して熊よけを行っています。
白川村では被害発生後、警察などによる見回りやクマが出没する時間帯の遊歩道への立ち入り禁止といった対策がとられています。
祭り期間中はのべ50人ほどの警察官がクマスプレーや盾を準備して警戒にあたっています。
ツキノワグマの特徴と生態
基本的な特徴
岐阜県に生息しているのはツキノワグマです。北海道に生息する大型のヒグマ(エゾヒグマ)は岐阜県には生息していません。
ツキノワグマは体長100~150センチメートル、体重30~130キログラムの大型動物です。体色は黒く、胸の白い月の輪の模様(無い個体もいる)が特徴ですが、模様の有無は個体によって異なります。
視力はあまり良くありませんが、聴覚・嗅覚は非常に優れています。
時速40キロメートルのスピードで人より速く走ることができ、木登り、水泳が得意です。
基本的には人を避ける動物ですが、力が強く、突然出会うと攻撃することもあります。
鋭いツメと大きな歯を持っており、不意の遭遇で引っかかれたり押し倒されたりすると大怪我をします。
生態と行動パターン
ツキノワグマは本来雑食で、昆虫、木の実、蜂蜜などを食べます。
秋季の主な餌はブナ、ミズナラ、コナラの堅果(ドングリ)類で、冬眠に備えてエサを求めて活発に行動する時期です。
5~6月はツキノワグマの繁殖期で、「共食い」が多発するほど気が立っており、特に危険とされています。
冬眠時期については、通常は12月頃から始まりますが、餌が不足している年は例年よりも冬眠時期が遅くなる傾向があり、少なくとも12月末までは注意が必要です。
暖冬だと冬眠する必要がなくなる可能性もあり、冬でも危険性は0ではありません。
早朝や夕暮れ時、夜間など薄暗い時間帯の外出は極力避けるべきです。
山に生息するクマは昼行性、人里近くに生息するクマは人間を避けて夜行性と言われています。
ヒグマとの違い
ツキノワグマとヒグマを比較すると、ヒグマは日本最大の陸生動物で体重は500キログラムを超える個体もいるため、その力は非常に強力です。
一方、ツキノワグマは体格が小さく攻撃性も低いですが、威嚇されたり追い詰められると反撃してくることがあります。
危険度を比較すると「ヒグマ5:ツキノワグマ1」とされていますが、ツキノワグマも十分に危険な動物です。
北海道にいるヒグマの中には、エゾジカや家畜を食べて肉の味を覚えた個体がいて、食べるために人を襲ったりします。
一方、東北にいるツキノワグマは基本的に人を食べず、パニックになって襲っているだけなので、致命傷を負わないよう耐えてやり過ごせば生き残れる確率は高くなるとされています。
ですが、近年の日本各地で発生しているツキノワグマによる人身被害状況を見ると、より危険性が増しているとも考えられますので、十分な注意・警戒が必要です
まとめ:
岐阜県では2025年、熊(ツキノワグマ)の目撃・出没情報が過去最多ペースで増加しています。
ドングリの凶作により冬眠前の熊が人里に出没しやすい状況が続いており、白川村や高山市などで人身被害も発生しました。
岐阜県内全域で生息が確認されており、推定3708頭が2つの地域個体群に分かれて生息しています。
安全対策として、岐阜県クママップで最新情報を確認するようにしてください。
住宅地では放置果樹の除去やゴミの管理を徹底し、地域ぐるみでクマを寄せ付けない環境づくりが推進されています。
冬眠するまでの間、山間部はもちろん平野部や住宅地でも警戒が必要です。
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