連日のようにテレビなどで「大谷翔平」という選手の名前をよく耳にするけれど『何がそんなにすごいの?』という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
その答えは、大谷選手が行っている「二刀流」という特殊なプレースタイルにあります。
野球というスポーツにおいて、プレーレベルが高くなるほど、投手と打者の両方を同時にこなすというのは、とても難しいチャレンジなのです。
この記事では、野球に詳しくない初心者の方でも理解できるよう、大谷翔平選手の二刀流が何故これほどまでに称賛されるのかを、丁寧に説明していきます。
野球における「二刀流」とは何か?基本の基本から理解する
野球には、大きく分けて2つの役割があります。
1つは「投手(ピッチャー)」で、ボールを投げる人。もう1つは「打者(バッター)」で、投げられたボールを打つ人です。
通常のプロ野球では、選手はこのどちらか一方をメインに担当します。投手として入団した選手は投げることに、打者として入団した選手は打つことに集中するわけです。
しかし、大谷翔平は異なります。彼は同じシーズンの中で、投手としてマウンドに上がり、その試合でも別の試合でも打者として打席に立つのです。
しかも、その両方で世界最高水準のパフォーマンスを発揮しています。これが「二刀流」と呼ばれるプレースタイルの正体です。
なぜ投手と打者の両立は難しいのか?──現代野球の厳しさ
投手はものすごく疲れる
野球の試合では、先発投手(試合の最初に投げる投手)は、多い時で1試合に90球~120球ほどボールを投げます。
この作業は、体に想像以上の負担をかけるのです。そのため、プロ野球では先発投手は4日~6日間の休養をもらいます。その間に体力を回復させ、肩や肘の損傷を防ぐわけです。
一方、打者はどうでしょうか。打者は毎日試合に出場できます。
レギュラー選手ですと、シーズン中は毎日(基本は週6日)のように打席に立ち、ボールを打つことができるのです。
これは、投手の投げるという動作ほど体に負担をかけないからです。
つまり、投手と打者の両立というのは、「体を回復させるための休養が必要な投手の役割」と「毎日できる打者の役割」を同時に行おうとするということ。
これはエネルギーの消費という観点で、極めて難しいのです。
現代の投手のレベルが上がりすぎている
もう1つの大きな理由が、現代野球における投手のレベル向上です。
以前(10~20年前)までのプロ野球では、時速150キロ以上のストレート(最も基本的で速い球)を投げられる投手は、貴重な存在でした。
しかし、今では違います。150キロを超えるストレートを投げることは、一流のプロ投手にとってはほぼ当たり前になってしまったのです。
さらに、高速で回転する変化球(曲がったり沈んだりする球)も増えており、打者が対応するのはどんどん難しくなっています。
つまり、打者として一流になるためには、より高度な技術と集中力が必要な時代になってしまったのです。
その一方で、投手としての負担も増えています。このような時代に、両方を同時にこなすというのがいかに難しいかが分かるでしょう。
大谷翔平の前にも二刀流選手はいた?過去の選手との比較
実は、二刀流という考え方は新しいものではありません。野球の歴史を遡ると、かつて2人の投手が投打を兼任していました。
ベーブ・ルース──野球の伝説的人物
その1人が、「野球の神様」とも呼ばれるベーブ・ルースです。
彼は1910年代から1930年代にかけて活躍した、野球史上最高の選手の1人とされています。
ルースはレッドソックスというチームに所属していた時代は、投手として活躍しながら、同時に優れた打者でもありました。
しかし、ここが重要な点です。ルースはキャリアの途中で、次第に投手から打者にシフトしていきました。
最終的には、ヤンキースに移籍してからは、ほぼ純粋な「打者」として活動するようになったのです。
言い換えれば、投手と打者を「同時に」両立させたのではなく、「投手から打者へシフト」させたのです。
約100年のギャップ
ベーブ・ルースが活躍していた1910年代から現在まで、投手と打者を同時に両立させる選手は、野球の世界でほぼ存在しなかったのです。
100年近い歳月が流れました。その間、野球は進化し、投手のレベルは上がり、打者も高度な技術を必要とするようになりました。
そうした環境の中で、大谷翔平が登場し、ベーブ・ルース以来100年ぶりに「二刀流」を復活させたのです。
しかも、彼が達成している成績は、ルース時代よりもはるかに厳しい環境での成績なのです。
成績の比較表
大谷翔平とベーブ・ルースの記録を比較してみましょう(大谷はメジャーリーグでの通算成績)。
| 項目 | ベーブ・ルース | 大谷翔平 |
|---|---|---|
| 打率 | .342 | .281 |
| 長打率(力強さ) | .690 | .575 |
| 防御率(投手の成績) | 2.28 | 3.01 |
数字上ではルースの方が優れているものの、数字だけの単純な比較はできません。
現代野球のレベル高さや難しさを考えると、大谷選手の成績は極めて高いレベルと言えます。
2024年~2025年の大谷翔平の成績がすごい理由
2024年シーズン──打者に専念した年
2024年、大谷選手はドジャースというアメリカ・メジャーリーグの強豪チームに所属しながら、打者としてのプレーに専念しました。※(手術明けで投手としての活動はお休み)
その結果は以下の通りです。
◆打率.310──これは打数100に対して約31安打という成績。リーグの中でも上位クラス
◆本塁打54本──リーグ1位。つまり、アメリカのプロ野球全体で最も多くホームランを打った
◆打点130──チームの得点に直結した活躍。こちらもリーグ1位
さらに、打つだけでなく、盗塁(ベースを盗む攻撃的な走塁)では59盗塁で、走塁能力の高さも証明しました。
2025年シーズン──二刀流の完全復活
2025年6月、大谷選手は投手としてマウンドに戻ります。2023年9月に右肘の手術を受けて以来、実に1年10ヶ月ぶりの登板でした。
その後、彼は見事に二刀流の両立に成功。シーズンを通じて、投手としても打者としても高いレベルのパフォーマンスを発揮しました。
シーズン終了後には、自身4度目のMVP(最優秀選手賞)に選ばれています。
投手としては、かつてより球の速度が速くなり、制球力も向上しているというから驚きです。
体を休める必要があるはずの投手として登板しながら、毎日のように指名打者(守備につかない打つ専門の役割を担う打者)として打席に立つという、通常では考えられないスケジュールをこなしていたのです。
大谷翔平の二刀流がなぜ歴史的存在と言われるのか?
時代背景の違い
大谷翔平の二刀流での活躍が歴史的な理由を理解するには、ベーブ・ルース時代と現在の違いを知ることが重要です。
ベーブ・ルースが活躍していた1910年代は、野球のレベルはまだ比較的低かったとされています。投手の球速も今より遅く、変化球の種類も少なかったでしょう。
一方、現代野球では、ほぼ全ての先発投手が150キロ以上のストレートを投げ、変化球の種類も多種多様で、キレや変化の大きさも凄まじいです。
このことから、大谷翔平選手が達成している二刀流は、昔よりも遥かに難しい時代での成功ゆえに歴史的と言われています。
世界規模での影響
大谷翔平選手は、アメリカのメジャーリーグ(MLB)で活躍しています。メジャーリーグは世界で最も高いレベルの野球の舞台。
大谷選手が所属するドジャースにレッドソックスやヤンキースといった、伝統ある名門・強豪チームが集っています。
その中で、日本人選手が投打両立で活躍することは、野球の世界にとって大きな出来事なのです。
大谷選手の登場により、「投手と打者は分業すべき」という野球界の常識が覆されました。
これは、単なるスポーツ記録の更新ではなく、野球というゲーム自体の新しい可能性を示したのです。
「大谷翔平=二刀流」の原点は日本ハム時代
念のため補足として、大谷翔平の二刀流はどこから始まったのか説明しておきます。
2013年、大谷選手は北海道日本ハム・ファイターズという日本のプロ野球チームに入団しました。
その際、球団は「二刀流育成プラン」という前例のない育成方針を提示して、大谷選手を支援したのです。
その成果は、2016年シーズンで最大となります。この年、大谷選手は「10勝・22本塁打」という、1918年のベーブ・ルース以来の二ケタ勝利&二ケタ本塁打を達成しました。
さらに、投手と指名打者の両部門で最優秀選手賞を同時に受賞するという、日本野球史上初の快挙を成し遂げたのです。
まとめ:大谷翔平の二刀流がすごい理由
本記事の最後に、大谷翔平選手の二刀流がこれほど騒がれる理由をまとめます。
第1に、投手と打者の両立は極めて難しいこと。この2つを同時にこなすのは、体力的にも技術的にも、最高難度のチャレンジ。
第2に、歴史的な背景。元祖二刀流ベーブ・ルースの時代より難しい現代野球の環境で“二刀流”を成功させていること。
第3に、世界的な影響。野球の最高峰・アメリカのメジャーリーグで、投打両立で活躍し野球の常識を変えたこと。
第4に、成績の素晴らしさ。通算4度のMVPを受賞をはじめ、獲得タイトルの多さで評価を絶対的なものにしていること。
本記事をここまで読んでくださった方は「大谷翔平の二刀流は何がすごいのか」お分かりいただけたかと思います。
それは、スポーツの常識を覆し、100年の歴史を塗り替え、世界最高峰の舞台で投打両立を成功させている、稀有な存在だからなのです。
