動物のフン(糞=ウンチ)を丸めて転がしている姿で有名なフンコロガシ。
テレビ番組や図鑑でその独特な生態を見たことがある方も多いでしょう。
しかし「フンコロガシって日本にもいるの?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
実は、私たちがよく知るフンコロガシは日本には生息していません。
では、フンコロガシはどこにいるのでしょうか?
この記事では、フンコロガシの生息地について詳しく解説し、日本で見られる糞虫の種類や、彼らが生態系で果たす重要な役割についてもご紹介します。
フンコロガシは日本にいるのか?

結論から申し上げると、一般的に「フンコロガシ」と呼ばれる昆虫は日本には生息していません。
多くの方がイメージするフンコロガシは、コガネムシ科のタマオシコガネ属(スカラベ)と呼ばれる仲間で、これらは主にアフリカや地中海沿岸地域に分布しています。
日本唯一の例外:マメダルマコガネ
ただし、厳密には日本にも糞を転がす習性を持つ昆虫が存在します。
それがマメダルマコガネという種類です。この昆虫は体長わずか2~3mmという極小サイズで、奈良公園などで発見されることがあります。
しかし、その小ささゆえに野外で見つけるのは非常に困難で、一般の人が目にする機会はほとんどありません。
マメダルマコガネは「日本最小にして日本唯一のフンコロガシ」と呼ばれることもありますが、本来のフンコロガシ=スカラベとは別種であり、分類学的には異なる仲間に属しています。
フンコロガシはどこにいるのか?世界の生息地

フンコロガシの主要な生息地は以下の地域です
アフリカ大陸
フンコロガシの最大の生息地はアフリカ大陸です。
特にサハラ砂漠周辺の乾燥地帯には多くの種類が生息しており、古代エジプト文明でスカラベとして神聖視されていたヒジリタマオシコガネ(Scarabaeus sacer)もこの地域の代表種です。
2025年8月4日に放送されたTBSのテレビ番組『クレイジージャーニー』では、アフリカ・ケニアでフンコロガシが糞を転がしている姿が確認できました。
地中海沿岸地域
南ヨーロッパの地中海沿岸、特にスペイン、イタリア、ギリシャなどでもフンコロガシが確認されています。
ファーブルの『昆虫記』で有名になったスカラベも、フランス南部で観察されたものです。
西アジア・中央アジア
トルコ、イラン、パキスタンなどの西アジア地域から、中国やモンゴルの一部まで分布が確認されています。
これらの地域は比較的乾燥した気候で、フンコロガシの生存に適した環境を提供しています。
南米
アルゼンチンのパンパス地方は「世界でも有数のフンチュウの楽園」と呼ばれ、カニタマオシコガネなど独特な形態を持つ種類が多数生息しています。
フンコロガシの生息地が限られる理由

フンコロガシが特定の地域にしか生息しない理由は、主に気候条件にあります。
乾燥した環境を好む
フンコロガシは湿度の高い地域には少なく、乾燥した環境を好みます。日本のような高温多湿の気候は、フンコロガシには適さない環境なのです。
彼らが糞を丸めて転がす行動も、乾燥した土壌があってこそ効率的に行えるものです。
大型草食動物の存在
フンコロガシは主に牛や羊、ゾウなどの大型草食動物の糞を餌としています。これらの動物が多く生息し、新鮮な糞が安定的に供給される環境が必要です。
土壌条件
糞を地中に埋めて子育てをするため、適度に柔らかく掘りやすい土壌が必要です。岩盤や粘土質の硬い土壌では、彼らの生活様式が成り立ちません。
日本で見られる糞虫の種類
日本にフンコロガシはいませんが、動物の糞を食べる糞虫は約160種類が確認されています。その多くは糞を転がすことはありませんが、生態系の中で重要な役割を果たしています。
オオセンチコガネ(ルリセンチコガネ)
奈良公園で見られる代表的な糞虫で、美しい瑠璃色の金属光沢を持ちます。
体長約2cmで、シカの糞などを食べて生活しています。地域によって色彩が異なり、緑色や赤色の個体も存在します。
ダイコクコガネ
日本最大の糞虫の一つで、雄には立派な角があります。糞の下に深い坑道を掘って育児巣を作り、幼虫の世話をする習性があります。
しかし近年、生息環境の減少により個体数が減少しており、環境省レッドリストで絶滅危惧II類に指定されています。
センチコガネ
オオセンチコガネよりも色が地味で、深紫や茶色の色彩を持ちます。
動物の糞のほか、キノコの腐ったものなどにも集まります。
ゴホンダイコクコガネ
5本の角を持つ特徴的な外見で、夜行性のため昼間は土に潜っています。奈良公園でも見つけることができますが、発見は容易ではありません。
フンコロガシの生態系で重要な役割
フンコロガシは、その独特な習性から「汚いもの」と思われがちですが、実は地球の生態系維持に欠かせない重要な存在です。
自然の清掃員
フンコロガシは動物の糞を素早く処理することで、牧場や草原の衛生環境を保っています。
糞にはハエやウジの幼虫が発生しやすいため、フンコロガシによる迅速な処理は病気の蔓延を防ぐ効果があります。
土壌の肥沃化
糞を地下に運び込むことで、土壌に栄養を供給し、肥沃な土地を作り上げます。
植物の成長に必要な有機物や窒素化合物が土中に蓄積され、生態系全体の循環を支えています。
種子の散布
糞に含まれる植物の種子が、フンコロガシによって様々な場所に運ばれ、植物の分布拡大に貢献しています。
これにより生物多様性の維持にも重要な役割を果たしています。
オーストラリアでのフンコロガシ導入事例
オーストラリアでは、家畜の糞処理が追いつかない状況に対処するため、意図的にフンコロガシを導入した成功例があります。
この取り組みにより、牧場の衛生状態が大幅に改善され、経済効果も100億円規模に達したと報告されているとのことです。
フンコロガシの古代エジプトでの文化的意義
フンコロガシは実用的な価値だけでなく、文化的にも重要な存在でした。
古代エジプトでは太陽神ケプリの化身として崇拝され、「スカラベ」と呼ばれて神聖視されていたそうです。
糞を転がす姿が太陽の運行に似ていることから、再生と永遠の生命の象徴とされ、護符や装飾品に広く用いられました。
まとめ:フンコロガシは日本にいない?生息地を解説
フンコロガシ(スカラベ)は日本にはほとんど生息しておらず、主にアフリカや地中海沿岸、一部のアジア地域などに分布しています。
日本で見つかるマメダルマコガネという極小の種類も存在しますが、一般的にイメージされるフンコロガシとは違う生き物です。
フンコロガシの生息地は限られていますが、彼らの果たす生態系での役割の大きさを知ることで、小さな昆虫たちの偉大さを改めて実感できるでしょう。
アフリカや地中海沿岸を訪れる機会があれば、ぜひ本物のフンコロガシを探してみてください。
